F1 2023 第12戦ハンガリーGP 決勝

レースレポート

今年から導入されたATAフォーマットの初開催となるハンガリーGPです。ATA(“Alternative Tyre Allocation”)とは、1レース週末で通常13セット(ハード×2、ミディアム×3、ソフト×8)供給されるタイヤを11セット(ハード×3、ミディアム×4、ソフト×4)に減らし、予選では装着可能なコンパウンドが指定されます。Q1はハード、Q2はミディアム、Q3はソフトです。

このレースの前には、アルファタウリから衝撃的なニュースが飛び込んできました!何と、ニック・デ・フリースが解雇され、ダニエル・リカルドが代わりに参戦です!
デ・フリースは角田裕毅に及ばないレースが続いたとはいえ、たったの11レースでの解雇となってしまいました。アルファタウリのチーム代表フランツ・トストさんは、「ルーキーが今のF1をものにするのに3年はかかる。」と常に言われていましたが、デ・フリースは単純にルーキーとは見られなかったのでしょう。トストさんにドライバーを決定する権限はなく、ヘルムート・マルコさんが決める訳ですが、マルコさんには3年待つという考えはなかったようです。
そして、下位チームからの復帰はないと見られていたリカルドが、迷うことなくアルファタウリから復帰したとのことで、これは驚きでした。
アルファタウリから復帰するということは、直接の比較対象は角田裕毅となりますので、日本ではこの2人の対決に大きな注目が集まることになりそうです。

スターティンググリッド(予選結果)

ATAにより、Q1はハードタイヤでのアタックです。フリー走行では、ほとんどのチームはハードタイヤを温存していましたが、アルファロメオとアルファタウリはFP3でハードタイヤのアタックを試していました。Q3進出は望み薄の下位チームが、Q1突破に向けて準備を整えてきたという形です。
そんな中、やはりアルファロメオ勢は準備の成果を見せ、周冠宇がQ1トップタイムを記録!逆にアルファタウリはギリギリアウトと言ってもいい結果で、角田裕毅が17番手でQ1敗退、リカルドは15番手でギリギリQ2進出!角田はAT04に乗り始めて2日目のリカルドに予選で敗れてしまいました。さすが8勝を挙げ、30回以上ポディウムに登っているベテラン、簡単には勝たせてくれそうにありませんね。
角田裕毅には是非がんばっていただいて、リカルドを圧倒するような成績を残し、レッドブルからも他チームからも欲しがられるドライバーに成長してほしいですね。

Q1では、トラフィックに引っ掛かり、最後のアタックをまともに走り切れなかったラッセルが18番手で敗退。Q2では、ミディアムタイヤをうまく使えなかったサインツが0.002秒差の11番手で敗退。
ATAの影響もあってか、上位勢が早々に敗退する波乱が起きました。

Q3は、トップ3が大混戦!ハンガリーGPで自身9回目のポールポジションを獲得したハミルトンと、2番手のフェルスタッペンのタイム差は0.003秒!そのフェルスタッペンと3番手ノリスの差は0.082秒!ほんのわずかな違いで、誰がポールを獲ってもおかしくない超接戦でした!

イギリスGPで大躍進のマクラーレン。ハンガロリンクでは不利だろうという下馬評を覆し、予選3,4番手を獲得です!ここでも速いということは、マシンの素性はトップレベルに近づいて来たと見ていいのかもしれません。

久々にポールポジションを獲得したハミルトンの、アタックラップはこちら!

スタート

このレース、大きな見どころの一つはスタートでした。

2番手スタートのフェルスタッペンが、ポールのハミルトンに並びかけ、イン側からターン1に突入!路面的に不利な2番グリッドをものともせず、トップを奪います!そのバトルの隙に4番グリッドスタートのピアストリが2番手に踊り出る!3番グリッドのノリスは、スタートは悪くなかったものの、ターン1への侵入が大外からとなり、前に出ることはできませんでした。
しかしターン2の先でハミルトンを抜き3番手に浮上!

上位3台の争いでターン1のイン側ががら空きになり、その進路をおいしくいただいたピアストリが2番手のポジションをゲットしましたね。

角田裕毅は11番手に浮上!ソフトタイヤスタートを活かし、スタート直後の中段グループの混乱もすり抜け、一気にジャンプアップしました!
AWSの分析映像によると、20台中最速のスタートが角田だったようです。スタートシグナルブラックアウト時のリアクションタイムが0.24秒、時速100kmへの到達が2.60秒、時速200kmへの到達が4.90秒でした。
この映像を見ると、スタートからターン1のブレーキング時の位置取りが絶妙でしたね。多重クラッシュを避け、ターン1への侵入もあまり苦しくないポジションでした。運と実力が重なり合った見事なスタートでした!

ターン1のブレーキングで、周冠宇がリカルドに追突!プッシュされたリカルドは、その勢いで前のオコンにヒット!オコンはぶつけられた衝撃でリアがスライドし、アウト側にいたガスリーとリアタイヤ同士がヒット!リアタイヤが宙に浮きあがりコントロール不能になった後スピン!ヒットされたガスリーも、右リアタイヤやリアウイングの右側を損傷した模様!

結局ガスリーは、接触の影響で2周目にピットインし、そのままリタイアです。
そして、3周目にはオコンがピットインしリタイア!アルピーヌは複合事故の煽りを受けて、たった3周で2台ともリタイアとなってしまいました。

トップに立ったフェルスタッペンは、すぐに2番手ピアストリに1.5秒以上の差をつけ、DRS圏外に追いやったうえで、タイヤマネジメントに入った模様です。

8周目、9番手ペレスが8番手アロンソを前の周から追い回し、ホームストレートでDRSオープン。ターン1の侵入でイン側をキープし、オーバーテイクを決めました!ペレス8番手に浮上!

9周目、アルボンがピットイン!ハードタイヤに交換しコースに戻ります。一旦最後尾までダウン。

10周目、10番手ストロール、11番手角田、12番手ボッタスが同時ピットイン!アルボンのピットインに反応し、カウンターですね。全員ハードタイヤに交換し、コースに戻ります。ここで角田はタイヤ交換に手間取ったか、静止時間が7.3秒と大きく遅れてしまい、アルボンの後ろ、最後尾に落ちてしまいました。いやー何やってんでしょうか?

16周目、ソフトスタートで6番手を走っていたサインツがピットイン!ハードタイヤに交換し、11番手でコースに戻ります。

17周目、4番手ハミルトンがピットイン!新品ハードに交換し、8番手でコースに戻ります。

18周目、3番手ノリスがピットイン、5番手ルクレールもピットイン!それぞれハードに交換し、コースに戻ります。ノリスは5番手、静止時間9.4秒かかってしまったルクレールは11番手まで順位を落とします。

19周目、2番手ピアストリがピットイン!ハードに交換し、4番手でコースに戻りましたが、直後ノリスにオーバーテイクされ5番手に落ちました。

21周目、暫定3番手走行中のアロンソがピットイン!ハードに交換し、11番手でコースに戻ります。

24周目、トップのフェルスタッペンがピットイン!ハードに交換し、余裕のトップでコースに戻ります。2番手ペレスとは22秒以上の差がありましたからね。

25周目、ハードスタートで第1スティントを引き延ばしていたペレスがピットイン!ミディアムに交換し、7番手でコースに戻ります。

27周目、7番手ペレスがターン1でサインツをオーバーテイク!6番手に浮上します!

28周目、6番手ペレスがラッセルをオーバーテイク!5番手に浮上します!

29周目、ここまで第一スティントをハードタイヤで引き延ばしていたラッセルがピットイン!ミディアムに交換し、14番手でコースに戻ります。少し時間が長かったか!?
このあたりから、5番手のペレスが前を走るハミルトンを徐々に追い上げていきます。次のタイヤ交換でアンダーカットを狙うために、差を詰めていくようエンジニアから指示がありました。

32周目、11番手のアルボンが2回目のピットイン!ハードに交換しコースに戻ります。後続車はこれに合わせてくるのか?・・・合わせて意味のある距離ではなかったですね。後続のボッタス、角田、周、マグヌッセン・・・誰も続きませんでした。

35周目、9番手のストロールが2回目のピットイン。ハードに交換し15番手でコースに戻ります。

37周目、5番手ペレスの追い上げで、前のハミルトンから1.5秒差まで迫ります。ペレスのエンジニアからは「ポディウムまで7秒差。行ける!」と発破をかけられてました。7秒差とは、3番手を走るピアストリとの差ですね。

39周目、ペレスがハミルトンの1秒以内に迫る!次の周のホームストレートでDRSオープンか!?

40周目、ペレスがホームストレートとターン1の先でDRSオープンするも、0.9秒差から0.5秒差に迫るのが精いっぱい。

41周目、ペレスが再びDRSオープン!0.4秒差に迫るものの、ターン3・4あたりでハミルトンが踏ん張り再び0.8秒差に戻されるという展開。さすがハミルトンというべきか。ペレスの古くなってきたミディアムタイヤが厳しいか!?

42周目、またまたペレスがDRSオープン!ターン1でグッとハミルトンの真後ろまで迫り、ターン2に向けてアウト側からハミルトンの横に並びかけますが、ターン2への侵入までに完全に前に出ることはできず、ハミルトンがイン側でポジションキープ!

43周目、ピアストリとペレスがピットイン!ピアストリはペースが落ちてきていたので、トラックポジションキープのため先に動いたか。ペレスは、これ以上ハミルトンを追いかけてもオーバーテイクは難しいという判断でしょう。アンダーカット狙いで先にタイヤ交換ですね。
ピアストリはハードからミディアムに交換。ペレスはミディアムからミディアムに交換。ピアストリのストップ時間2.8秒、それに対してペレスは1.9秒!これで一気に0.9秒も差を詰めたことになります。ペレスの前1秒以内を走っていたハミルトンおよびそのピットクルーにとっても、これはプレッシャーになります!

ハミルトンの動きにもよりますが、ここからピアストリvsペレスの3位表彰台を賭けたバトルに発展しそうです。この時点ピアストリ6番手、ペレス7番手で、その差は2秒!マシンのペースはペレスに分がありますが、オーバーテイクの難しいハンガロリンク、この後面白いバトルが見られそうです。

44周目、5番手のルクレールがピットイン!ハードタイヤに交換し8番手でコースに戻ります。
同じ周に9番手のアロンソもピットイン!ハードタイヤに交換。後ろのストロールとは24秒以上の差があり、セーフティーリードです。順位変わることなくコースに戻りました。

45周目、2番手のノリスがピットイン!ミディアムに交換し3番手でコースに戻ります。この時点2番手のハミルトンは、まだ1回しかタイヤ交換していないため、後々ノリスは2番手に戻ります。
4番手を走っていたサインツもピットイン!ハードタイヤに交換し、8番手でコースに戻ります。ピットアウト中にルクレールがホームストレートを駆け抜けていき、サインツの前に出ましたね。チーム内でのアンダーカットです。

46周目、ピアストリを追っていたペレスが、ホームストレートでDRSオープン!オーバーテイクには至りませんが、いよいよ迫ってきました。

47周目、ペレスがDRSを使ってピアストリと横並びに!ターン1でアウト側からペレスがオーバーテイクを仕掛けます!ピアストリはイン側のラインをキープして何とか粘り、ターン2ではイン・アウト入れ替わり、ピアストリがアウト側で更に粘りを見せますが、ターン2の出口で芝生にタイヤを出してしまい、スピードを少し失ったところで完全にペレスに前に出られてしまいました。これでオーバーテイク完了!
このバトルを見ると、ピアストリは新人ながら、クリーンファイトのできる良いドライバーですね。

ルクレールに5秒ペナルティー!ピットレーンでのスピード違反です。後ろを走るサインツとの差は5秒以内!ここからまたチームメイトバトルとなるか!?

先ほどの、ペレスとピアストリのバトル、ターン2でペレスがピアストリをコース外に押し出した疑いで審議となりましたが、直後にお咎めなしとなりました。

50周目、ハードタイヤで第2スティントを引き延ばしていたハミルトンがようやくピットイン!ミディアムに交換し、ピアストリの後ろ5番手でコースに戻ります。4番手ピアストリとの差は7秒。同じミディアムタイヤですが、ピアストリの方が7周多く走ったタイヤです。残り21周でハミルトンは4位がもぎ取れるか!?という戦いになります。

この時点、3番手ペレスと4番手ピアストリの差が5.2秒。オーバーテイクから約4周で5秒の差をつけてしまいました。そして同じマクラーレンに乗る2番手ノリスと3番手ペレスの差が8.5秒!こちらも残り21周で追い上げることができるか、楽しみなレースになってきました。久々のレッドブルワンツーなるか!?

52周目、トップのフェルスタッペンが、満を持してピットイン!2番手ノリスとは34秒差のセーフティーリードです。ミディアムに交換しトップのままコースに戻ります。

これで、コース上の全車が2回目のタイヤ交換を終えました。おそらく全員がこのままファイナルラップまで走り切るでしょう。この時点の順位は、フェルスタッペン、ノリス、ペレス、ピアストリ、ハミルトン、ルクレール、サインツ、ラッセル、アロンソ、ストロールのトップ10です!

56周目、5番手ハミルトンが4番手ピアストリの1秒以内に接近!タイヤ交換時7秒あった差を約7周でここまで縮めてきました。

57周目、ピアストリの0.4秒差に迫ったハミルトンが、ホームストレートからDRSオープン!ターン1手前でイン側に並び、難なくオーバーテイク!さすがのハミルトン、鮮やかに一発で仕留めましたね。これで、ハミルトン4番手、ピアストリ5番手となります。表彰台も期待されたピアストリでしたが、ここからの挽回は厳しそうです。

60周目、コントロールライン付近で2番手ノリスと3番手ペレスの差が3.5秒!10周で5秒詰めてきました!残り11周、ペレスはタイヤを持たせつつ3.5秒の差から逆転することができるか!?

しかしここから、ノリスが踏ん張り、ペレスと3.5秒前後の差を行ったり来たり、なかなか差が縮まっていきません。

65周目、8番手ラッセルが前を行くサインツに迫る!最終コーナー出口で0.25秒差!DRSを使ってあっさりオーバーテイク!サインツ粘れませんでした。ラッセルは7番手に浮上!更にその6秒前を行くルクレールは5秒ペナルティーがあるため、実質1秒差!

66周目、3番手ペレスと2番手ノリスの差は4.9秒まで広がってしまいました。ペレス2位は無理か?徐々に差が広がっています。
この後逆にペレスは4番手のハミルトンから猛追を受け、1.5秒差まで迫られます。最後まで耐えられるかという戦いに変貌しました。

フィニッシュ!

1位はこのレース一人旅を続けたフェルスタッペン!2位はがっちり安定感のある走りを見せたノリス、3位ペレスの表彰台です。4位ハミルトン、5位ピアストリ、6位ルクレール、7位ラッセル、8位サインツ、9位アロンソ、10位ストロールでした。あ、ルクレールは5秒ペナルティがあるため、6位ラッセル、7位ルクレールに入れ替わりですね。

レッドブルはチームとして開幕から11連勝!昨年も合わせると12連勝!1988年、マクラーレンMP4/4で達成した開幕から11連勝の記録に並びました!
更に、フェルスタッペンはマイアミGPから7連勝!これはもう誰にも止められないのでしょうか!?

そして、ここ2レースで大躍進のマクラーレンが、ノリスが2戦連続2位表彰台、ピアストリも5位入賞と、連続して上位入賞を果たしました。ここ数年で稀にみる、シーズン中の開発競争による勢力図の変貌ではないでしょうか!?

ハンガリーGP後のドライバーズランキングはこちら!
もうフェルスタッペンのことは気にせず、2位争いに注目しましょう。

コンストラクターズランキングはこちら!注目すべきは、アストンマーティンとフェラーリの3位争いでしょうか!?

ノリスが表彰台に上がるといつもやっている、スパークリングの瓶底を表彰台に叩きつけて、勢いよく噴射させるやつですが、何と、その衝撃で、優勝したフェルスタッペンのトロフィーが表彰台から落ちて破損してしまうという失態!本人もフェルスタッペンも笑っていましたが、わりと大ごとですよね。
半年かけて作られたハンガリーの工芸品が、割れて崩れてしまいました。
知りませんでしたが、前線イギリスGPでも、フェルスタッペンのトロフィーを落下させていたようです。ノリスさん・・・

次戦は、夏休み前最後のレース、スパ・フランコルシャンで開催される、ベルギーGPです。昨年は14番グリッドからスタートしたフェルスタッペンが優勝しましたね。今年もレッドブルのマシンはスパにはまっていると思います。また圧勝劇を見せてくれるのか、それとも好調マクラーレンが何かサプライズを起こすのか!?面白いレースになりそうです。

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